2021/11/04
シミの種類をご存じですか?種類を知って適切な治療を
最終更新日 2023/10/17
年齢を重ねるごとに増えていくシミ。ひと言でシミといっても、実はいろいろな種類があることをご存じでしょうか。そのためシミの種類によって治療も異なります。まずは自分のシミがどの種類のものなのかを診断してもらってから、種類に合わせた適切な対処を行いましょう。
シミとはなに?その原因は
シミとはメラニンと呼ばれる「皮膚の中で作られる色素」が蓄積されて、肌が薄茶色や褐色に見える状態を差します。
メラニンは、紫外線から肌を守る大事な役割を持っています。しかし、さまざまな原因でメラニンを作る細胞(メラノサイト)が増えたり、過剰にメラニンを作ってしまったり、ターンオーバーのサイクルが乱れたりして、本来排出されるはずのメラニンが皮膚に留まってしまい、シミとなってしまいます。シミの出来る原因の多くが紫外線によるものですが、ストレスやタバコ、不規則な生活、摩擦などの物理的な刺激なども要因になります。
それではシミの種類についてみていきましょう。
一般的にシミと呼ばれるものは、見た目では同じように見えても、医学的にはいくつかの種類に分類されます。また、健康上は問題のない良性のものがほとんどですが、シミだと思っていたものが皮膚がんだった、ということもあり注意が必要です。
老人性色素斑(ろうじんせいしきそはん)
シミの中で頻繁に見られるのが「老人性色素斑(日光性黒子)」です。一般的にシミというと、老人性色素斑を指すことが多く、そのおもな原因は、「紫外線によるダメージの蓄積」です。先に説明したように、紫外線に繰り返しさらされることで、シミのもとであるメラニン色素を作るメラノサイトが過剰に活動し、シミになります。男女を問わず発生し、加齢とともに増えていきます。だいたい30代以降にできることが多いのですが、紫外線を多く浴びていた場合は、10代のうちから現れることもあります。またこの老人性色素斑は、日光に当たる部位ならどこにでもできる可能性があり、顔はもちろん、手や首などにも発生します。シミの形は円形や楕円形であることが多く、境界ははっきりとしています。
肝斑(かんぱん)
肝斑は、30~60代の女性に多くみられ、おもに両頬に左右対称に現れる褐色の色素斑です。両頬以外には、こめかみや口の周り、おでこなどにもできます。老人性色素斑との併発や、後述のADMと発症部位が似ていることから、診断や治療の見極めが難しいシミのひとつです。肝斑ができる原因については、はっきりとしたことは明らかになっていませんが、女性ホルモンによる色素細胞の活性化との関連が指摘されており、妊娠・出産、ピルの服用、閉経などの影響で、肝斑の色調が変化するという報告もあります。
紫外線やストレスのほか、洗顔やクレンジングにともなう摩擦の刺激などにより慢性的な炎症が肝斑を悪化させる要因と考えられているため、日々のUVケアや物理的な刺激を減らすことが重要です。
雀卵斑(じゃくらんはん)
雀卵斑とはそばかすのことです。色白の人に見られる傾向があり、遺伝性があるものです。3歳頃からでき始め、思春期がピークになります。
茶褐色で3㎜以下のシミが、頬・鼻を中心に散らばっています。紫外線を浴びることで、症状は悪化します。治療を行っても再燃する可能性があります。
炎症後色素沈着(えんしょうごしきそちんちゃく)
PIH(Post Inflammatory Hyper-Pigmentation)ともよばれる肌の炎症を起こした後にできるシミです。虫刺されやニキビ、皮膚炎など強い炎症や、炎症が長引くことで、メラノサイトが活性化し色素沈着をきたします。通常は、数か月から半年ほどで自然に元の皮膚の色に戻ります。
顔だけでなく、背中やデコルテ、肘や膝などほぼ全身(手のひら、足の裏を除く)にでます。入浴時にゴシゴシ強くこすったり、下着の締付けが強かったりなど、長期にわたって同じ部位に摩擦がかかることによっても起こりやすくなります。
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)
老人性疣贅(ろうじんせいゆうぜい)とも呼ばれるイボの一種で、肌の加齢症状の一つです。全身にできる可能性がありますが、特に紫外線の影響を受けやすい顔や首に出やすい症状です。医学的にはシミと異なりますが、色は薄い茶色・茶褐色・黒色のため、一般的にシミと認識されることも多い症状です。大きさは数mm~数cmとさまざまで、表面はざらつきがあり、盛り上がっています。
ほくろ(色素性母斑)
メラニンをつくる細胞が増え、茶褐色~黒く見える症状で、色が薄いものはシミと認識されることもあります。生まれたときからのあるものだったり、成長途中〜大人になってからできるものもあります。平坦なものから、盛り上がったものと形状はさまざまでほぼ全身にできます。
後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)
茶色や灰色、少し青みがかった褐色で思春期以降にできはじめる女性に多い症状です。皮膚の深いところ(真皮内)に、メラニンを作る母斑細胞ができるアザの一種です。こめかみ、頬、小鼻など、左右対称にもあらわれることがあります。
シミの治療法
〇老人性色素斑の治療
そもそも老人性色素斑は、病気ではありません。ですから、治療しなければならないわけではありません。けれども、その見た目から治療を希望する人が多いため、皮膚科などでは次のような治療が行われています。
代表的な治療法は、レーザー治療です。小さなシミがいくつもある場合やダウンタイムを避けたい場合は、光治療を用います。
その他にも、ビタミンCやトラネキサム酸などの内服薬、トレイチノンなどの塗り薬や、ハイドロキノン、ビタミンC などの美白剤が配合された化粧品が用いられることもあります。
〇肝斑の治療
肝斑は、炎症により症状が悪化するおそれがあるため、飲み薬や外用剤、イオン導入などの炎症が起こりにくい治療からはじめることが一般的です。内服薬ではビタミンCやトラネキサム酸が、外用ではハイドロキノンやビタミンCなどの美白剤が使われます。ビタミンCやトラネキサム酸のイオン導入を用いることもあります。
また、肌への物理的な刺激を減らすために、洗顔やスキンケアの方法やアイテムの見直しも重要になります。
いわゆる一般的なレーザー治療は、強い炎症により肝斑を増悪させることから禁忌とされてきましたが、最近ではレーザーを弱い出力で照射する「レーザートーニング」という治療もあります。レーザートーニングは、内服治療などの静的な治療やスキンケアを行ったうえで、併用することが推奨されています。
〇雀卵斑の治療
雀卵斑は、広範囲に細かいシミが点在しているので、広い範囲に照射ができる光治療や、トレチノインやハイドロキノンの外用剤による治療が多く用いられます。また、ひとつひとつのそばかすにレーザーを当て治療することもできます。
〇炎症後色素沈着の治療
炎症後色素沈着は、一般的に3~6か月で自然消退するため、あえて治療を行わないこともあります。積極的に治療する場合は、ビタミンCやトラネキサム酸のイオン導入や内服、浅いレベルのケミカルピーリング、ハイドロキノンの外用など、炎症の起こりにくい治療を行います。
脂漏性角化症(しろうせいかくかしょう)の治療
脂漏性角化症は、盛り上がりを削るように治療しますので、CO2(炭酸ガス)レーザー治療や液体窒素が使用されます。盛り上がりが少ないものに対しては、Qスイッチレーザーなどでメラニンを除去することもあります。
○ほくろの治療
ほくろの治療には、CO2(炭酸ガス)レーザー、電気メス、手術による切除縫縮といった方法が用いられます。ほくろのサイズや状態により治療法が変わることもあります。
○後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)の治療
メラニンやメラニンを作る細胞が皮膚の深いところにあるため、治療ができるのは「Qスイッチレーザー」か「ピコレーザー」のみです。治療後は、色素沈着を防ぐためにトラネキサム酸の内服や美白剤を使用する場合があります。
シミの予防法
シミを予防する方法としては、まず紫外線対策が必須です。日焼け止めは、夏だけでなく1年中使用したうえで、帽子をかぶる、日傘を使うなど紫外線対策をしっかり行いたいですね。
また、必要以上に肌をさわらないようにし、肌の摩擦を起こさないように心がけます。特に、洗顔やクレンジング時のこすり洗い、洗顔後に顔をゴシゴシ拭く動作、化粧品をすりこんで塗るなどの動作、過度なマッサージなどは、できるだけ行わないようにしましょう。
そして保湿を十分に行い、肌のターンオーバーを正常に保つようにします。
特徴も治療法も異なるシミですが、見分けがつきにくく、併発している場合もあります。ですから、シミの治療を検討している人は、信頼できる医師に相談することをおすすめします。カウンセリングの際に治療の効果だけでなく、痛みや治療後の経過、アフターケアなどについても、充分に確認するようにしましょう。
まとめ
- シミの中でもっとも多く見られるのは「老人性色素斑(日光性黒子)」
- 紫外線によるダメージの蓄積で、加齢とともに増えていく
- 老人性色素斑は、紫外線が当たる部位ならどこでも発生しうる
- 肝斑は、おもに両頬に左右対称に現れることが多いシミで、30~60代の女性に多い
- 肝斑を悪化させる要因として、紫外線やストレス、洗顔やクレンジングの摩擦、女性ホルモンの関与が指摘されている
- 雀卵斑とは、そばかすのことで、日本人では色白の人にみられ、遺伝性がある
- 炎症後色素沈着は、炎症によりメラノサイトが活性化した状態で、通常数か月~半年で消退
- 脂漏性角化症は、いぼの一種で加齢症状の一つである
- ほくろは、小さなものから盛り上がったものまで様々な形状で体のあちこちにできる
- 後天性真皮メラノサイトーシス(ADM)は、思春期以降にでき始める。正確にはシミではなくアザの一種である
- 老人性素斑の代表的な治療法はレーザー治療で、光治療、内服や外用剤も用いられることがある
- 肝斑の治療では、まずは炎症が起こりにくい治療を先に行い、状態によってはレーザートーニングを併用することもある
- 雀卵斑の治療には、光治療やレーザー治療、や外用剤を使用する
- 炎症後色素沈着は、自然消退まで治療しないこともある。治療する場合は、内服やイオン導入など炎症が起こりにくいものを選ぶ
- シミは特徴も治療法も異なるが、見分けがつきにくい場合があるので、治療を希望する場合には信頼できる医師に相談すること