2023/01/16

【医師監修】スキンケアに取り入れたいトラネキサム酸 その働きについて解説!

【医師監修】スキンケアに取り入れたいトラネキサム酸 その働きについて解説!

最終更新日 2024/01/19

秋になりシミやくすみが気になってきた・・・という方もいるのではないでしょうか。そんなときに取り入れたい成分の一つが「トラネキサム酸」です。美白に効果のある有効成分ですが、具体的にどのような働きがあるのでしょうか。詳しく解説します。
 

トラネキサム酸とは

トラネキサム酸は、必須アミノ酸である「リシン」をもとに人工的に合成されたアミノ酸です。1960年代に日本で開発され、もともとは医療の現場で止血や炎症を抑える目的で使われていました。医薬品としては比較的身近な存在で、風邪などで喉が腫れている時などに服用したことがある人も多いでしょう。
そんな治療薬として使われていたトラネキサム酸が、美容成分として注目されるようになったのは1990年代以降です。肌荒れ予防やシミ改善などの効果が知られるようになり、2002年には美白効果のある有効成分として厚生労働省の認可を受けました。その後、美容の分野ではおもに美白効果を謳った医薬品や医薬部外品に広く配合されるようになっています。また、皮膚科では肝斑(かんぱん)の治療薬として使われたり、イオン導入の施術にも用いられたりしています。
近年は、トラネキサム酸配合の市販薬やスキンケア製品などが多く、手軽に美白ケアやシミ対策ができる成分として人気を集めています。
医療職とトラネキサム酸

 

肌にも嬉しい効果がある!?トラネキサム酸の働きについて

トラネキサム酸には「抗プラスミン作用」といって、「プラスミン」の働きを阻害する作用があります。プラスミンはたんぱく質を分解する酵素の一種で、血栓を溶かしたり、炎症を起こす物質を誘発したりする働きがあります。トラネキサム酸にはこうした働きを抑える作用があり、次のような効果が期待できます。
 

止血

プラスミンは出血した際に、血液が修復する過程で作られた血栓を溶かす働きがあります。トラネキサム酸にはこの働きを抑える作用があるため、外傷時や分娩時の止血などに用いられています。
 

炎症やアレルギー反応を抑制

プラスミンは、たんぱく質を分解する過程でサイトカイン(炎症を促す物質)を発生させます。これによって炎症やアレルギー反応が起こると考えられています。トラネキサム酸にはこうした働きを抑える作用があり、肌においては肌荒れ防止効果も期待できます。
 

シミや炎症後色素沈着などの予防や改善

プラスミンは、表皮(肌表面)のメラノサイトを活性化させる物質の生成に関わっています。メラノサイトの働きが活性化すると、メラニンが大量に作られてシミの原因になります。そこで、抗プラスミン作用のあるトラネキサム酸を取り入れると、メラノサイトが活性化しにくくなるため、シミやニキビ跡などの炎症後色素沈着の予防にも効果が期待できます。
 

肝斑の予防や改善

肝斑の原因として、女性ホルモンの影響が挙げられます。女性ホルモンのバランスが崩れると、プラスミンが刺激を受けてメラノサイトが活性化し、その結果、肝斑ができると言われています。そのため、プラスミンの働きを抑制できるトラネキサム酸は、肝斑の有効な治療薬として用いられています。
 
メラニンの生成
このようにさまざまな働きのあるトラネキサム酸ですが、肌への効果を期待して取り入れる場合には、肌に塗る方法と薬を内服する方法の2つがあります。それぞれについて詳しく見ていきましょう。
 

トラネキサム酸を肌から取り入れる

最近では、トラネキサム酸配合の化粧水や美容液、クリームなどがたくさん販売されています。こうした製品をスキンケアに取り入れるのが、最も手軽な方法と言えるでしょう。薬に比べると効果は劣りますが、手軽にシミ対策をしたい方や、トラネキサム酸が自分に合うのかまずは試してみたい、という方にはおすすめです。さらに、レーザー治療や光治療といったより積極的なシミ治療に抵抗がある方や、ハイドロキノンなどの美白成分が合わなかった方でも、刺激性の低いトラネキサム酸なら問題なく使用できる可能性があります。そのほかレーザー治療後などで肌が敏感だけど紫外線対策を徹底したい時などにもおすすめです。
スキンケア製品にはトラネキサム酸のほかにビタミンC誘導体などの美白成分や、保湿成分、抗炎症成分などが一緒に配合されていることが多いので、ご自身の悩みに合わせて選ぶとよいでしょう。
ほかに肌から取り入れる方法には、外用薬やイオン導入などがあります。興味のある方はクリニックで相談してみましょう。
 

トラネキサム酸を口から取り入れる

トラネキサム酸をスキンケア製品から取り入れる方法は手軽で副作用のリスクも低いのですが、効果の面でいうと物足りなさを感じる方がいるかもしれません。そのような場合には内服薬も選択肢のひとつですね。美白目的でのトラネキサム酸処方は保険適応外になりますので、まずはクリニックで相談してみましょう。市販薬として購入する場合は、その副作用や飲み合わせの危険性なども十分に把握したうえで取り入れるようにしましょう。
 
トラネキサム酸取り入れ方法

トラネキサム酸の副作用や注意点

トラネキサム酸は副作用が起こりにくいと言われていますが、次の点に注意しましょう。
 

肌から取り入れる場合

刺激性が低いとは言え、肌荒れなどの症状が出てしまう可能性はゼロではありません。肌にかゆみや塗ったところが赤くなってしまった場合は使用を中止して、皮膚科を受診しましょう。
 

口から摂る場合

ごく稀ではありますが、吐き気や嘔吐、食欲不振、下痢などの症状が出る可能性があり、人工透析を受けている人はけいれんなどの副作用にも注意が必要です。
また、内服薬は休薬期間が設けられる場合があります。市販薬の場合は注意事項をよく確認し、クリニックで処方してもらう場合も医師の指示に従って正しく飲むようにしましょう。
さらに、ほかの薬の飲み合わせにも注意したいところです。一緒に飲んではいけない薬もありますので、クリニックへ行くときにはお薬手帳を持っていきましょう。見落としがちなのが、風邪薬などとの併用です。トラネキサム酸は風邪薬に配合されていることがあり、併用することで上限量を超えてしまう可能性があるので、とくに注意しましょう。
なお、次の人はトラネキサム酸を服用できない場合があります。
 

  • 血栓ができやすい人
  • 脳梗塞や心筋梗塞の既往歴がある人
  • 妊娠中、授乳中の人
  • ピルを服用中の人など

 

トラネキサム酸を上手にスキンケアに取り入れよう

ご紹介したように、トラネキサム酸は有効性も安全性も比較的高いため、日々のシミ・くすみ対策や美白ケアに取り入れやすい成分です。美白に興味があるけどクリニックの治療は少し敷居が高い、などと感じている方や、ほかの美白成分が肌に合わなかったという方は、まずはトラネキサム酸を配合したスキンケア製品から始めてみてはいかがでしょうか。 
スキンケアに励む女性
 

まとめ

  • トラネキサム酸は人工的に合成されたアミノ酸
  • トラネキサム酸は当初医療の現場で使われていたが、その後、美白効果や肌荒れ効果が認められ、スキンケア製品に配合されたり肝斑治療薬として使われたりするようになった
  • トラネキサム酸には抗プラスミン作用があり、止血、炎症やアレルギー反応の抑制、シミや肝斑の予防や改善などの効果を期待できる
  • トラネキサム酸配合のスキンケア製品を使うことが最も手軽な取り入れ方
  • レーザー治療や光治療のあとの敏感になった肌を守るため、また、敏感な肌でハイドロキノンなどの美白製品が合わなかった人などにおすすめ
  • 副作用は起こりにくいが、中には合わない人や内服薬を使用できない人もいる

 

<監修>

山本 有紀 先生 (皮膚科専門医)
Dr. Yuki Yamamoto
 

~プロフィール~
和歌山県立医科大学病院教授
和歌山県立医科大学医学部皮膚科准教授
https://www.wakayama-med.ac.jp/hospital/shinryo/dermatology/
 
ご経歴
1990年3月 高知医科大学 卒業
1999年 和歌山県立医科大学医学部 助手
2004年 和歌山県立医科大学医学部 講師
2007年 和歌山県立医科大学医学部 准教授
2015年11月 和歌山県立医科大学 病院教授
 
専門分野
<所属学会>
日本皮膚科学会
日本美容皮膚科学会(理事長)
日本香粧品学会(理事)
日本皮膚外科学会(理事)
日本皮膚悪性腫瘍学会(理事)
日本臨床皮膚外科学会(理事)
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会(評議員)
日本癌治療学会
日本がんサポーティブケア学会 Oncodermatology 部
日本形成外科学会 など
 
<資格ほか>
日本皮膚科学会認定専門医 認定美容皮膚科・レーザー指導専門医
日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン作成委員
日本皮膚科学会尋常性ざ瘡治療ガイドライン作成委員
 
<主な著書>
『あたらしい美容皮膚科学会』 日本美容皮膚科学会監修 (南山堂)
『皮膚外科学』 日本皮膚外科学会監修 (秀潤社)
『皮膚小腫瘍のケミカルピーリング 今すぐ出来る皮膚小手術、処置のテクニック』(中山書店)
『皮膚の抗老化最前線アンチ・エイジングシリーズ2』(2006年エヌ・ティー・エス/共著)
『Monthly Book Derma144 メスを使わない美容治療 実践マニュアル』(全日本病院出版会/編集)
『新皮膚科レジデント・戦略ガイド』(2009年 診断と治療社/共著)

 

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