2023/12/27

【医師監修】自宅でのピーリングは何を使えばいい?角質ケアの成分を解説!

【医師監修】自宅でのピーリングは何を使えばいい?角質ケアの成分を解説!

最終更新日 2024/01/19

「ピーリングに興味があるけれど、なんとなく肌への刺激が強そうで心配」という方は多いのではないでしょうか。たしかに皮膚科や美容皮膚科などの医療機関で治療として行われている「ケミカルピーリング」は医療行為として行われていることより自宅で用いるホームケア製品とはまったく異なります。同じ成分でも角質ケアを目的に化粧品に含まれている成分濃度は法律で低く規制されていますので安全性は高いものになります。そこで今回は、化粧品に含まれる角質ケア成分の種類について解説します。

自宅でできる角質ケアとピーリングについて

ピーリングは、古い角質を除去する角質ケアの一つとして知られています(※注)。自宅でできる角質ケアは他にもスクラブ洗顔や酵素洗顔などがありますが、次のように角質へのアプローチの仕方が違います。

  • 酵素による角質ケア:皮脂やたんぱく質を分解することで古くなった角質を除去する
  • スクラブによる角質ケア:小さな粒子で肌をマッサージすることで古い角質をからめとりながら取り除いていく
  • ピーリング:AHA(アルファヒドロキシ酸)やBHA(ベータヒドロキシ酸)といった「酸」を含む成分で古くなった角質を剥がし、ターンオーバー(肌の新陳代謝)を促す

※注:スクラブ洗顔や酵素洗顔などを含む角質ケア全般を「ピーリング」と呼ぶ場合もありますが、この記事では他の角質ケアと区別するために、「酸」を含んだ成分による角質ケアのみを「ピーリング」と呼んでご紹介いたします。

※ピーリングの詳しい説明についてはこちらの記事でもご紹介しております。

肌について

ピーリングケアのメリット

お伝えした3つの角質ケアは、古い角質を除去する、という点で共通していますが、その中でも特にピーリングは、次のような特徴があります。

スキンケアアイテムが豊富

スクラブや酵素は多くの場合、洗顔料など洗い流すアイテムに含まれています。一方、ピーリング成分であるAHAやBHAは、洗顔料だけでなく、化粧水や美容液、ジェルなど、さまざまなスキンケア製品に配合されています。そのため、自分が取り入れやすいアイテムで角質ケアをすることができます。

成分の種類や濃度がさまざまで、自分に合ったものを選べる

AHAやBHAを一つの成分と思っている方もいるかもしれませんが、実はこれらは角質ケア成分の総称です。特にAHAは自宅でできる角質ケア成分としてよく知られていますが、その種類が豊富で、配合濃度もスキンケア製品によってさまざまです。敏感肌の方は敬遠しがちなピーリング化粧品ですが、なかには濃度が低いものや、マイルドにはたらくよう設計されたアイテムもあるため、自分の肌の状態に合わせて選ぶことができます。

では、具体的にピーリング成分であるAHAとBHAにはどんな種類があるのでしょうか。次から解説していきます。

代表的な角質ケア成分:AHA

AHAは、正式には「アルファヒドロキシ酸(α− hydroxy acid)」と言って、リンゴや柑橘類、サトウキビなどに含まれる天然由来の成分です。主にフルーツから抽出されることから「フルーツ酸」とも呼ばれています。AHAには次のような種類があります。

グリコール酸

サトウキビやブドウの葉や実に含まれる有機酸(酸を含む有機化合物)です。化粧品の成分として用いられるAHAの中では分子量が一番小さく、肌への浸透性が高く、低濃度でも効率よく働く、といった特徴があることから、多くの化粧品によく配合されています。
古くなった角質の細胞どうしの接着力を弱めて皮膚表面からはがれやすくする作用があり、美容医療のケミカルピーリングの薬剤としても広く用いられています。ただし、化粧品に配合されているグリコール酸は濃度が低く調整されていることより、美容医療で使われる薬剤にくらべて作用は穏やかです。

乳酸

さまざまな生物の組織、乳の発酵物に存在する有機酸です。乳酸を含むサワーミルク(乳製品などを発酵した)をクレオパトラが浴びていた、という言い伝えがあり、古くから美容に使われていたと言われています。現在では、デンプンから抽出したものや化学的に合成したものが化粧品に配合されています。
グリコール酸と同じく角質をはがれやすくする作用があり、比較的穏やかな作用が期待できる成分です。アレルギー症状を引き起こす可能性がある成分のため、注意が必要です。

リンゴ酸

その名の通りリンゴから抽出されますが、他にもブドウなどさまざまな動植物に存在する有機酸です。角質をやわらかくする働きがあります。

酒石酸(しゅせきさん)

ブドウやレモン、ワインなどに含まれる有機酸です。肌を引き締める作用や、古い角質を除去する作用、肌のpHバランスを整えるはたらきがあります。

クエン酸

柑橘類や梅などに含まれる有機酸です。グリコール酸や乳酸と比べると分子量が大きいためピーリング作用はかなり穏やかですが、濃度が高いほど肌への刺激は強くなります。

マンデル酸(杏仁酸)

ビターアーモンドなどに含まれる有機酸で、古い角質を溶かす作用があります。比較的分子量が大きいため、作用する範囲が浅い層にとどまり、穏やかな作用が期待できる成分です。AHAは基本的に水溶性ですが、マンデル酸は脂溶性です。

代表的な角質ケア成分:BHA(サリチル酸)

BHAは、正式には「ベータヒドロキシ酸(β− hydroxy acid)」と言って、主にサリチル酸のことを指します。BHAは油溶性で、古い角質や毛穴の角栓などを溶かして除去する働きがあります。
BHAはAHAにくらべて角質を除去する作用が強く、高い効果が期待できますが、その分、肌への刺激が強く、赤みなどの副作用が出やすいというデメリットもあります。そのため、市販の化粧品で配合できる濃度は0.2%以下、と決められています。ちなみに、医療機関におけるケミカルピーリングでは、サリチル酸を均一に溶かすために「マクロゴール」という成分に溶かして使われることが一般的です(サリチル酸マクロゴール)。

その他の角質ケア成分:PHA

AHAやBHA以外で最近注目されているものに「PHA(グルコノラクトン)」があります。角質を取り除く作用だけでなく、保湿作用や抗酸化作用を兼ね備えていて、「次世代型AHA」とも呼ばれています。また、従来のAHAよりも刺激性が低いため、敏感肌の人が使える角質ケア成分としても注目されています。

AHAとBHA

ピーリング作用のある化粧品の選び方と注意点

ピーリング作用のある化粧品を選ぶ際には、以下の点を意識してみましょう。

配合されている成分と使い方を確認する

一般的に、ピーリング系の化粧品には複数の角質ケア成分が配合されています。製品によって配合されている種類や濃度が異なるため、どの成分がもっとも多く配合されているのか、確認したうえで選ぶようにしましょう。特にピーリング系の化粧品を初めて使う人や、肌への刺激が気になる人は、濃度が低く調整された製品を選ぶと良いのですが、濃度が表示されていないことも。
そのようなときは、サンプルで肌の一部に使用してピリピリ感がないかどうかを確認する、また、肌の調子が悪くなったら使用をやめることが重要です。洗顔料など洗い流して使うタイプなどを選ぶのもよいでしょう。

取り入れやすいアイテムを選ぶ

「角質ケア=スペシャルケア」のイメージが強いかもしれませんが、医療機関のケミカルピーリングと違い、一度おこなっただけで劇的な効果が期待できるものではありません。定期的にケアすることを考慮して、ふだんのお手入れに取り入れやすいアイテムを選ぶのがおすすめです。特にAHAは洗顔料や化粧水、美容液、ジェルなどさまざまなアイテムに配合されているため、選択肢が豊富です。

使用頻度や使用法を守る

ピーリング作用のある化粧品は、製品によって使用頻度が大きく異なります。毎日取り入れられるものから、「1週間に1~2回」といったように使用間隔をあけることが推奨されているものもあり、安全に使うためにも必ず使用頻度を確認しましょう。角質や毛穴のつまりが気になるからと必要以上にケアをし過ぎるのは、乾燥や肌荒れの原因になるので気をつけましょう。
また、使用法を確認し、正しい方法でケアをすることも大切です。特に注意したいのが、ケアの際に生じる摩擦刺激です。たとえば、ゴシゴシ洗顔したり、化粧水を強くパッティングしたりするのはNG。摩擦による刺激は肌トラブルの原因になります。角質ケアはついつい力を入れてしまいがちですが、優しくおこなうことが非常に重要です。
※摩擦刺激による影響やこすらない洗顔法を知りたい方はこちらをご覧ください。

保湿ケアやUVケアを徹底する

古い角質が除去されると、一時的に肌が乾燥しやすくなるため、かならず保湿ケアを入念におこないましょう。また角質ケア後の肌は、角層が薄くなり紫外線の影響を受けやすくなっているため、日焼け止めクリームを塗るなどUVケアを徹底することもお忘れなく。
※UVケアについて知りたい方はこちらをご覧ください。

肌が敏感な人は慎重に

化粧品に含まれる角質ケア成分は安全性を考慮したうえで濃度やpHが調整されていますが、それでも赤みや肌荒れのリスクは伴います。そのため、肌が敏感な人や、レーザー治療後などで肌が過敏な時期には、濃度の高いアイテムを使ったピーリングケアは避けたほうが安心です。自己判断で合わない製品を使ってしまうことで、かえって肌の状態を悪化させる可能性もあるため、医療機関で肌の状態を診てもらったうえで、適切なピーリングケア製品や使用するタイミングを相談しましょう。
スキンケアをする女性
今回は、さまざまな角質ケア成分についてご紹介しました。ピーリング系の化粧品に含まれる成分の種類や濃度、剤形などは製品によってさまざまで、比較的穏やかな作用のピーリング製品もあります。自宅でのピーリングに興味のある方は、まずはどんな種類の角質ケア製品があるのか、調べてみてはいかがでしょうか。

まとめ

  • ピーリングはAHAやBHAといった酸を含む成分で古い角質を剥がし、肌の新陳代謝を促す角質ケア
  • ピーリング成分は、洗顔料だけでなく、化粧水や美容液、ジェルなどさまざまなアイテムに配合されている
  • AHAやBHAは種類や濃度が豊富で、製品によって作用も異なるため、肌の状態に合わせて選ぶことができる
  • AHAにはグリコール酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、マンデル酸などがあり、BHAは主にサリチル酸のことを指す
  • PHAは、角質を取り除くだけでなく、保湿作用や抗酸化作用も持っていて、最近注目されている
  • ピーリング作用のある化粧品を選ぶ際には、成分を確認すること、使用頻度や使用法を守ること、保湿ケアとUVケアを徹底することなどがポイント

<監修>
山本 有紀 先生 (皮膚科専門医)
Dr. Yuki Yamamoto

~プロフィール~
和歌山県立医科大学病院教授
和歌山県立医科大学医学部皮膚科准教授
和歌山県立医科大学病院 皮膚科

ご経歴
1990年3月 高知医科大学 卒業
1999年 和歌山県立医科大学医学部 助手
2004年 和歌山県立医科大学医学部 講師
2007年 和歌山県立医科大学医学部 准教授
2015年11月 和歌山県立医科大学 病院教授

専門分野
<所属学会>
日本皮膚科学会
日本美容皮膚科学会(名誉理事長・理事)
日本香粧品学会(理事)
日本皮膚外科学会(副理事長)
日本皮膚悪性腫瘍学会(理事)
日本臨床皮膚外科学会(理事)
日本皮膚アレルギー・接触皮膚炎学会(評議員)
日本癌治療学会
日本がんサポーティブケア学会 Oncodermatology 部
日本形成外科学会 など

<資格ほか>
日本皮膚科学会認定専門医 認定美容皮膚科・レーザー指導専門医
日本皮膚科学会ケミカルピーリングガイドライン作成委員
日本皮膚科学会尋常性ざ瘡治療ガイドライン作成委員

<主な著書>
『あたらしい美容皮膚科学会』 日本美容皮膚科学会監修 (南山堂)
『皮膚外科学』 日本皮膚外科学会監修 (秀潤社)
『皮膚小腫瘍のケミカルピーリング 今すぐ出来る皮膚小手術、処置のテクニック』(中山書店)
『皮膚の抗老化最前線アンチ・エイジングシリーズ2』(2006年エヌ・ティー・エス/共著)
『Monthly Book Derma144 メスを使わない美容治療 実践マニュアル』(全日本病院出版会/編集)
『新皮膚科レジデント・戦略ガイド』(2009年 診断と治療社/共著)

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