2023/07/10

【医師監修】そのシミやしわ、もしかしたら身体のさびが原因かも?肌の「酸化」と取り入れたいアンチエイジング習慣について

【医師監修】そのシミやしわ、もしかしたら身体のさびが原因かも?肌の「酸化」と取り入れたいアンチエイジング習慣について

最終更新日 2024/01/19

「錆(さび)」と表現されることもある身体の「酸化」。老化を進め、とくに肌においてはシミやしわの原因になることがわかっています。では、肌が酸化するとは具体的にどのようなことなのでしょうか?そこで今回は、肌の酸化について、また酸化を防ぐために取り入れたいアンチエイジング習慣についてご紹介します。
 

身体の錆!?体内で起こる酸化とは?

金属が酸化することで起こる「錆」。鉄などの原料が内部まで錆びてしまうと腐食してボロボロになってしまいますが、実は身体でも似たような現象が起こることがあります。
私たちの身体は生命を維持するために酸素を取り込んでいます。体内の酸素は、エネルギーを作り出す過程の中で、強い酸化力を持つ「活性酸素」を発生させます。悪いイメージを持っている人も多い活性酸素ですが、実は身体の免疫システムなどにかかわっていたり、生理活性物質として働いていたりと、重要な役割も担っています。
そのため、活性酸素は一概に悪者というわけではありませんが、その酸化力の強さから、あまりに増えすぎると健康な細胞まで攻撃して、身体にダメージを与えてしまうことがあります。たとえば、がんや生活習慣病、老化などと関連していることがわかっていて、こうしたことから、身体の酸化は「錆」とも表現されているわけです。
 

肌の酸化はシミやしわの原因にも

このように、活性酸素によって身体の細胞が酸化すると老化が進んでしまうわけですが、肌の細胞も例外ではありません。とくに活性酸素がたくさん作られると、しわやたるみ、シミくすみなどの原因になることがあります。
 

しわやたるみ

体内で過剰に増えた活性酸素は、真皮(しんぴ:皮膚表面の表皮よりも深いところにある層)のコラーゲンやエラスチンにダメージを与えます。また、これらのもとを作っている「線維芽細胞」の働きも低下させてしまいます。すると、肌の弾力やツヤ、ハリが失われてしまい、しわやたるみの原因になります。とくに、紫外線の影響で活性酸素が増えて起こるしわやたるみなどの肌の老化現象は、「光老化」とも呼ばれています。
コラーゲンやエラスチンは年齢とともに減少していきますが、そのスピードを加速させてしまうのが活性酸素です。
しわ
 

シミ・くすみ

活性酸素は、表皮の「メラノサイト」にも刺激を与えます。すると、シミのもとになる「メラニン」が過剰に作られてしまいます。肌の新陳代謝である「ターンオーバー」がスムーズにおこなわれていればメラニンは皮膚外へと排出されますが、活性酸素はその機能さえも低下させてしまうことがあります。その結果、メラニンが蓄積されると、シミくすみができやすくなります。
しみ
 
このように、活性酸素は肌にダメージを与えるだけでなく、老けて見える原因にもなります。
 

身体を守る!抗酸化力について

とは言っても、身体もいつもやられっぱなし、というわけではありません。身体には活性酸素から守るしくみが備わっているからです。たとえば「抗酸化酵素」。難しい名前ですが、簡単に言うと活性酸素の働きを弱めたり、受けたダメージを修復したり回復させたりする酵素のことです。たとえば、SOD(スーパーオキシドジスムターゼ)やグルタチオンペルオキシダーゼ、カタラーゼなどがあります。また、体外から取り込むビタミンCやビタミンE、ビタミンA(カロテノイド)、ポリフェノールなどの抗酸化作用を持つ栄養素も、活性酸素を除去したり、身体のダメージを修復したりするうえで重要な働きをしています。そのため、これらのしくみが機能していれば、活性酸素が作られてもダメージを最小限に抑えることができます。
ところが、何らかの理由で活性酸素が過剰に作られてしまったり、身体の防御機能が弱くなってしまったりすることがあります(酸化ストレス)。すると、活性酸素の力を抑えきれずに身体がダメージを受け、病気や老化の原因となることがある、というわけです。
 

紫外線も!?活性酸素が作られる要因について

では、なぜ活性酸素が大量に作られてしまうのでしょうか。その理由として、次のことが挙げられます。
 

紫外線

地表に届く紫外線にはUV-AとUV-Bがありますが、そのどちらもが活性酸素を発生させる原因になります。紫外線により発生した活性酸素は、細胞のDNAや脂質、タンパク質などにもダメージを与えることがわかっています。とくに紫外線を繰り返し浴びることで発生する活性酸素のひとつ「一重項酸素」は、毒性がとても強く、皮膚がんの原因にもなります。
 

加齢

抗酸化酵素を作り出す能力は、加齢によって衰えることがわかっています。抗酸化酵素が減ってしまうと、活性酸素が作られやすくなります。
 

生活習慣の乱れ

アルコールの過剰摂取、たばこの煙、睡眠不足、ストレス、偏った食生活などは活性酸素の生成に大きくかかわっています。とくに食生活が乱れていると、抗酸化作用を持つ栄養素や抗酸化酵素を作り出す栄養素が不足したり、活性酸素を発生させる食品添加物の摂りすぎにつながったりします。また、適度な運動は身体によいのですが、あまりに激しい運動は活性酸素を生成する原因になると言われています。
 

その他の外的要因

ダイオキシンなどの環境汚染物質、放射線、電磁波などが原因になることがあります。
 
 
このように、活性酸素の生成には日々の生活習慣が密接に関係しています。
 

肌の老化予防のために!「抗酸力」を高めるアンチエイジング習慣

健康な身体を維持することはもちろん、肌の老化を加速させないためには、「抗酸化力」を高めておくことがポイントです。そこで最後に、「抗酸化力」を高めるアンチエイジング習慣についてご紹介します。
 

生活習慣を整える

お伝えしたように、生活習慣の乱れは活性酸素を増やす原因になります。ストレスがたまらないように、しっかり睡眠をとるなど休息を心がけましょう。また、過度なアルコール摂取や喫煙も活性酸素を発生させるため、こうした習慣がある人は見直すことをおすすめします。
 

バランスのよい食事で身体の内側から抗酸化力を高める

抗酸化酵素のもとになるたんぱく質やミネラル(亜鉛、銅、マンガン、セレンなど)、抗酸化作用のあるビタミンCビタミンEビタミンA(カロテノイド)、ポリフェノールなどを積極的に摂りましょう。また、これらはさまざまな栄養素と一緒に摂取することで、効率よく働きます。そのため、サプリメントなどで特定の栄養素だけを摂るよりも、まずはバランスのよい食事を心がけましょう。
 

日焼け止めなどで紫外線対策をする

紫外線によってダメージを受けた肌の細胞は、抗酸化力が低下し、活性酸素によるダメージを受けやすくなります。そのため、日焼け止めをこまめに塗る、帽子やストール、長袖の衣服を着用する、日傘を活用するなどの方法で、紫外線対策を徹底しましょう。
 
※日焼け止めの選び方について詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
バランスのよい食事
 

抗酸化作用のあるスキンケア製品を取り入れるのもおすすめ

肌のダメージを抑えるためには、抗酸化作用のある化粧品を使うこともおすすめです。たとえば、次のような成分があります。
 

ビタミンE

「若返りビタミン」とも呼ばれていて、抗酸化作用や抗炎症作用、細胞の新陳代謝を促す働きがあります。光などに弱く、酸化されやすいことから化粧品成分にすることは難しいと言われていましたが、近年は「TPNa® (ティーピーエヌエー、表示名称:トコフェリルリン酸Na)」というビタミンE誘導体が開発され、化粧水などにも配合されるようになっています。また、ビタミンCと併用すると抗酸化効果をよりアップさせることができます。
 
※ビタミンEについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
 

ビタミンC

メラニン生成阻害、メラニン無色化、コラーゲン生成、皮脂分泌抑制など、さまざまな働きを持つ成分ですが、とても高い抗酸化作用があり、活性酸素を除去する働きがあります。ただし、ビタミンEと同じで酸化しやすい性質があるため、化粧品などには「ビタミンC誘導体」として配合されています。
 
※ビタミンCについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
 

フラーレン

ビタミンCの172倍の抗酸化力を持つ美容成分です。また、抗酸化力の持続性が高く、11時間以上も効果を発揮すると言われています。さらに、光に強いという特徴もあり、ビタミンCやビタミンEと併用すると、紫外線による酸化から守ってくれます。
 
※フラーレンについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
 

アスタキサンチン

毒性の強い「一重項酸素」に対しての抗酸化力が非常に高いと言われています。

スキンケアをする女性
 
お伝えしたように、細胞の酸化や活性酸素は、病気の発症や老化を早める原因にもなります。生活やスキンケアを通して抗酸化力を高めながら、若々しく健康な肌を目指しましょう。
 

まとめ

  • エネルギーを作り出す過程の中で発生する「活性酸素」は酸化力の強さから、増えすぎると健康な細胞まで攻撃し、病気の発症や老化の原因になることがある
  • 肌細胞が酸化すると、しわやたるみ、シミやくすみの原因になる
  • 活性酸素が増える要因として、紫外線、加齢、生活習慣の乱れ、外的要因などがある
  • 抗酸化力を高めるためには、生活習慣を整えること、バランスのよい食事を心がけること、紫外線対策を徹底することなどが大切
  • 肌の抗酸化力を高める法として、ビタミンEやビタミンC、フラーレン、アスタキサンチンなどを配合した化粧品を取り入れることもおすすめ

<監修>
日景 聡子 先生(皮膚科専門医)

~プロフィール~
さとこ皮膚科・美容クリニック院長

ご経歴
2006年札幌医科大学卒業。 札幌医科大学、伊達赤十字病院などを経て
2018年~円山公園皮膚科形成外科勤務、2019年より同院長を務める。
2022年7月にさとこ皮膚科・美容クリニックを開院。

専門分野
<所属学会>
日本皮膚科学会
日本美容皮膚科学会
日本美容外科学会
日本更年期と加齢のヘルスケア学会

<資格ほか>
日本皮膚科学会認定 皮膚科専門医
日本皮膚科学会認定 美容皮膚科・レーザー指導専門医

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